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研究紹介パンフレット

 

 

       
       

脊椎動物の受精様式を多様化する
分子・細胞メカニズムを解き明かす

 生殖生物学 教授 渡邉 明彦

  
 

両生類の様々な卵外被マトリクス
 

 体内受精は、水中や陸上の様々な環境下での生殖を可能にします。脊椎動物ではこの受精 様式は哺乳動物や鳥類、爬虫類に普遍的で、両生類では淡水中の体外受精から進化して陸上進 出に大きく貢献しています。両生類の卵はジェリー層や泡巣のような、種に固有の卵外被マト リクスに囲まれて、様々な生殖環境下で受精や胚発生を保証されており、また、このマトリク スを通過して卵に到達し、受精するために、精子の形態や運動が高度に特殊化しています。実際、 イモリやモリアオガエルの精子のかたちや動きのユニークさには目をみはるものがあります。 このように、精子がもつ形態と運動の可変性は、体内受精の進化の重要な鍵となったと考えら れますが、精子はこの性質をどのようにして維持しているのでしょうか。

 当研究室ではこの問題を解くために、アカハライモリの体内受精において働く精子運動開 始タンパク質、SMIS を単離しました。SMIS 遺伝子は、両生類に広く保存された新規遺伝子で、 150 アミノ酸からなるタンパク質をコードしています。両生類の体外受精種では、SMIS は淡 水中の低浸透圧環境と協調して運動を活発にし、精子が卵外披マトリクスを通過しやすくしま す。したがって、SMIS の作用機序をたどることによって、精子運動に可変性を与える要因を 明らかにできます。さらには運動と形態変化との関連性を解き明かせることを期待しています。 研究は、旧来の生化学的手法や電子顕微鏡学的手法などに加えて、バイオイメージング、次世 代シークエンシング、ゲノム編集など、最新の実験手法を用いて、カリフォルニア大学、東北 大学、筑波大学、宇都宮大学、産業技術総合研究所などの研究グループと共同して、多角的に おこなっています。


イモリの精子

 最近では、SMIS がアカハライモリ精子の運動を誘起するために細胞膜や細胞内で機能す るカリウムチャネルや カルシウムチャネル、環状AMP 合成酵素の分子種が明らかになりつつ あります。研究をとおして得られる成果は、近年生殖補助医療技術などの利用によって体外受 精も行えるようになったヒトを始め、脊椎動物の受精機構に関する新規の知見をもたらします。

 
精子細胞内のカルシウムイメージング
 

イモリ卵ジェリー層中のSMISの分布
(左)ジェリー層表面の蛍光抗体染色。SMIS(緑)は
  先体反応誘起物質(赤)に覆われている。
(右)ジェリー層表面付近の走査型電子顕微鏡観察。
  SMIS が局在する顆粒が見える。
 
ゲノム編集によって作成した
アルビノイモリ
 
         
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