山形大学理学部理学科

比較形態・生化学研究室

 

〒990-8560

山形県山形市 小白川町 1-4-12

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筋細胞を最初に獲得した動物は?

  筋肉は「動物」の運動をつかさどる代表的な組織であり、とても複雑かつ精密な構造をもっています。では、最初に筋細胞を獲得した生物は何でしょう?
  形態学的にみて、進化の過程でもっとも早い段階で筋細胞による運動性を獲得したと考えられるのは刺胞動物(ヒドラ、イソギンチャク、クラゲなど)ですが、厳密に言うと刺胞動物の筋肉組織は表皮の機能を兼ね備える「表皮筋細胞」とよばれる特殊な組織です。 近年の分子遺伝学的解析により、刺胞動物は左右相称動物とは独立に横紋筋組織を獲得したという説が提唱されていますが(Steinmetzら, 2012)、この点についてはまだ不明な点もあり、より詳細な検討が必要です。

 

原始的な筋細胞をもつクラゲとプラナリア

  クラゲ類は原始的な筋肉を考える際とても興味深い生物ですが、クラゲ類を研究のため大量にかつ安定して維持することは、研究室内では困難な作業です。 この点について私たちは、クラゲ類の飼育で世界的な業績を挙げている山形県鶴岡市立加茂水族館の全面的なご協力をいただき、共同研究としてクラゲ類の原始的筋細胞の構造と機能について研究を続けています。

  プラナリアは失った頭部さえも再生してしまうその高い再生能力が注目され、古くから数多くの研究が行われています。 プラナリアの筋細胞は紡錘形で横紋をもたず、脊椎動物の平滑筋に似た形態をとっていますが、電子顕微鏡法による詳細な検討結果から、原始的な「斜紋筋」とする説もあります。 私たちはこの原始的筋細胞についても、独自の観点から構造解析を進めています。

 

 

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脊椎動物横紋筋サルコメアにおけるconnectinの局在模式図

巨大タンパク質 connectin / titin

  connectin(titin)は現在自然界で知られているタンパク質のうち、糖鎖などの付加していない単純タンパク質のでは最大級の繊維状タンパク質です。その分子量は4 MDaと一般的なタンパク質分子の数百倍に相当し、その分子長は1μmにもおよびます。コネクチン分子は脊索動物横紋筋のサルコメアにおいて太い線維をZ盤に繋ぐ役割をし、筋収縮の際のガイドとなるとともに、筋発生時における筋原線維形成のガイドとしての機能や、筋原線維の物理的状態を化学的シグナルに変換する機能を持つことがわかっています。
  無脊椎動物の横紋筋においても、connectinに相同性をもつタンパク質がこれまでに多数発見されており、この様な巨大タンパク質は生命の進化の過程で徐々に巨大化してきたと考えられています。

 

原始的筋細胞における connectin / titin

  ここで、クラゲやプラナリアの原始的筋細胞にはconnectinはあるのか?あるとすればどの程度の大きさ(分子量)で、そのアミノ酸配列はどの様になっているのか? また、原始的筋細胞のサルコメア内においてこれらのタンパク質はどの様な役割を果たしているのか?について興味がもたれます。
  私たちはこれらの生物におけるconnectinの検出と、筋細胞内における機能の解析を目指し、生化学的手法および共焦点レーザー顕微鏡法や電子顕微鏡法により、上記の点について検討をおこなっています。

 

 

海洋島における生物の進化を考える”パラオプロジェクト”

  当研究室は山形大学理学部生物学科で進められているパラオプロジェクト(→参照)に参加し、パラオ海水湖に隔離されたクラゲ類と外海のクラゲ類間でどの程度の形態的変異が起きているかについて、主に刺胞細胞と筋細胞の形態の比較観察をおこなう研究を分担しています。

 

海水湖のクラゲの形態的特徴

  パラオ海水湖に生息するミズクラゲ(Aurelia sp.4個体はパラオ外海に生息するミズクラゲ(Aurelia sp.3)や日本産(Aurelia sp.1)ミズクラゲ個体に比べ体構造がぜい弱で雌個体の保育嚢が発達しないなどの形態的特徴の他、傘の拍動の頻度が低いなど運動性にも差違が生じています。
  私たちはこれらミズクラゲの幼生を用い、クラゲの成長段階における体各所の形態的・構造的特徴の変化について,詳細な検討を続けています。

 

 

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山形県内におけるナミウズムシ、カズメウズムシの分布調査(庄司ら, 2014)

山形県内におけるプラナリア類の分布状況

  山形県内にはほぼ全域に渡り最上川とその支流を中心として、多くの河川が流れています。 これらの河川には多くのプラナリア類が生息しており、山形県内ではこれまでにナミウズムシ、イズミオオウズムシ、カズメウズムシ、ミヤマウズムシの4種の分布が確認されています。

  私たちはプラナリアの筋細胞の研究の傍ら、山形県内の河川におけるプラナリア類の生息状況の調査を続けています。

 

プラナリア目撃情報提供のお願い

・山形県内の河川において、上記4種以外のプラナリアを見かけた方がいらっしゃいましたら、当研究室まで情報をお寄せいただけると幸いです。

 

 

実施中の共同研究

  ・パラオ海水湖産クラゲ類の種内分化に関する研究

    半澤 直人 教授: 山形大学学術研究院(理学部生物学科)
    奥泉 和也 館長: 山形県鶴岡市立加茂水族館

  ・両生類精子運動開始因子に関する研究

    渡邉 明彦 教授: 山形大学学術研究院(理学部生物学科)
   渡邉 絵理子 博士: 山形大学基盤教育院

  ・横紋筋細胞の進化とconnectin/titinの分子進化に関する研究

    川村 勇樹 博士: 埼玉医科大学医学部